2025年3月31日の夜、米国上院の議場で一人の議員が演説を始めた。ニュージャージー州選出のコリー・ブッカーである。
議場に立ち続けた時間は翌日まで及び、25時間5分に達した。米国上院で一人の議員が行った演説として、それまでの最長記録を更新した。
その前の記録は、1957年の24時間18分だった。南部サウスカロライナ州のストロム・サーモンド議員が、公民権法案に反対して行った演説である。
なぜ議員はこれほど長く話し続けられるのだろう。
演説を終わらせるルールが争点になる
議会には議案を討論する仕組みがあり、どこかで討論を終えて採決へ進むための規則もある。
米国上院では歴史的に、討論の時間を限らずに続けることが可能な場合があった。議員が長く演説して採決を遅らせる戦術は、フィリバスターとして知られる。
もちろん、すべての長い演説がフィリバスターに当たるわけではない。ブッカーの2025年の演説も、議事妨害の歴史との比較で語られたが、具体的な法案の採決を遅らせる伝統的なフィリバスターと同じ仕組みではなかった。
1957年には、公民権法へ反対するために使われた
サーモンドは1957年8月28日夜から翌29日夜まで、24時間18分にわたって演説した。
目的は、公民権法案を阻止しようとすることだった。米国で人種差別の是正を目指す法整備を妨げるために、この議会手続が用いられた歴史は重要である。
上院史料によれば、南部の議員たちは過去にも公民権法案に反対する際、長時間の討論を利用した。1964年には大規模な公民権法の成立へ向け、討論終結の手続が重要な役割を果たしている。
討論を終えるための投票もある
上院には**クローチャー(討論終結)**という仕組みがある。
1975年の規則変更で、通常の法案については上院議員の5分の3、現在の100人を前提にすれば通常60人の賛成で討論を終えられるようになった。ただし人事承認などでは後に異なる先例が採用され、すべての案件が同じ60票ルールではない。
討論の自由は、少数派が意見を述べ続ける手段になる。一方で、多数派の支持する政策を成立させにくくする効果もある。
25時間5分という数字は、人間の体力を考えても印象的だ。しかしもっと重要なのは、議会が何を決定できるかを、討論と採決の手続が左右しているという点である。