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アメリカは潜水艦からミサイルを発射し、3000通の手紙を配達したことがある

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更新日:2026-10-31

1959年6月8日、アメリカ海軍の潜水艦「バーベロ」が、大西洋上から一発のミサイルを発射した。

運んでいたのは爆弾ではなかった。3000通の手紙である。

ミサイルはフロリダ州の飛行場へ向けて飛び、約22分後に到着した。潜水艦から郵便物を打ち出し、空を飛ばして別の場所へ届ける。そんな奇抜な実験が、アメリカの郵便当局と海軍の協力で本当に行われた。

核弾頭を載せる場所に、手紙を詰めた

使われたのは「レギュラスI」と呼ばれる誘導ミサイルだった。潜水艦から発射され、遠くの目標へ飛ぶ兵器として開発されたものだ。

実験では、核弾頭を収めるための場所に、赤と青に塗られた郵便用の容器を入れた。その中に3000通の封筒が収められていた。

当時のアメリカ郵政長官アーサー・サマーフィールドは、発射前に手紙を積み込む様子を写真に撮らせた。封筒には大統領や副大統領、議員などへ宛てたものがあり、郵便局長自身のメッセージが入っていた。

発射地点から目的地までは約160キロメートル。ミサイルは海軍の飛行場に到着し、手紙は取り出されて通常の郵便網へ引き渡された。

郵便局には夢があり、軍には別の目的があった

当時は航空郵便がすでに普及していたが、郵便局長はもっと速い輸送方法を夢見ていた。サマーフィールドは、いつの日かミサイルによってアメリカ国内だけでなく、ヨーロッパやアジアへも数時間で手紙を届けられると語った。

しかし軍の側から見れば、この実験には別の意味があった。

1950年代は冷戦の最中で、アメリカとソ連はミサイルや宇宙開発の技術を競っていた。潜水艦から発射したミサイルが目標地点へ正確に到着したことは、単なる郵便配達以上の軍事的な宣伝効果を持っていた。

便利そうでも、郵便にはならなかった

実験は成功した。だが、ミサイルを使う郵便制度は実現しなかった。

手紙3000通を運ぶために、兵器として設計された高価なミサイルを一発使う。長い距離を速く飛べても、普通の飛行機に比べて大量の郵便を安く運べるわけではなかった。安全性や運用の難しさもある。

スミソニアン国立郵便博物館には、この実験に使われた郵便容器が保存されている。容器には郵便物を示す文字が付いているが、それが収まっていたのはミサイルの弾頭部分だった。

郵便の速達を夢見た実験が、軍事兵器の性能を示す場にもなった。冷戦の真っただ中、手紙3000通がミサイルに積まれて空を飛んだのである。

REFERENCES

参考文献・出典

  1. Cruise Missile Mail ↗Smithsonian National Postal Museum
  2. Firing Letters: The 60th Anniversary of Missile Mail ↗Smithsonian National Postal Museum
  3. Missile Mail ↗United States Postal Service

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