国連の安全保障理事会には15か国が参加している。ある問題をめぐって14か国が賛成したとしても、最後の1か国の反対で決議が採択されない場合がある。
ただし、どの1か国でもよいわけではない。その国が常任理事国の5か国のどれかである場合に限られる。これが拒否権である。

2016年撮影:Thomas Park/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。
なぜ5か国だけ特別なのか
第二次世界大戦が終わるころ、国際社会は戦争を防ぐ新しい組織を作ろうとしていた。その際、大国が組織に参加し続けることが重要な条件だと考えられた。
常任理事国になったのは中国、フランス、ソ連、英国、米国。現在はソ連の席をロシアが引き継いでいる。
国連の公式説明によれば、この5か国が国際的な平和と安全の維持で重要な役割を担うという設計のもと、通常の国とは異なる地位を与えられた。
しかし、ここには矛盾もある。国際社会の平等を重視する一方で、重要な決定の一部は限られた大国の同意に依存することになった。
常任理事国が棄権したらどうなるか
拒否権は、単に常任理事国が賛成票を出さなかった場合に発生するのではない。
国連安全保障理事会の公式な投票制度では、通常の実質事項の決議には15か国中9か国以上の賛成が必要で、常任理事国が反対票を出すと採択されない。一方、常任理事国が棄権するだけなら、必要な9票の賛成があれば採択される場合がある。
手続事項については拒否権の扱いも異なる。したがって15か国のどんな投票でも5か国の誰かが拒否できるという説明は不正確だ。
なぜ今も変わらないのか
拒否権には、強い軍事力を持つ国が決議を無視して対立することを避けるための仕組みだという考え方がある。その反面、戦争や人道危機への対応を妨げることもある。
国連の構成国が増え、世界の人口や経済の構造も変わるなかで、安全保障理事会の改革を求める意見は続いている。しかし憲章を改正するには高いハードルがあり、常任理事国の批准も必要になる。
安全保障理事会が抱える難しさは、単なる多数決の問題ではない。世界の安全保障を考える会議を、強い国々が抜けずに続けるために作られた制度が、重要な決定の妨げにもなるという点にある。