総選挙が終わっても、その日のうちに国会が新しい首相を自動的に決めるわけではない。議員が選ばれ、国会が招集され、首相を指名する手続きが必要になる。
そして首相が決まっても、首相ひとりが法律を自由に作れるわけではない。法律の制定は国会、行政を実際に担うのは内閣、裁判を行うのは裁判所。この三つはそれぞれ異なる仕事を受け持っている。

国会議事堂。撮影:Douglaspperkins / Wikimedia Commons / CC BY 3.0(表示用に縮小)。
国民が選んだ議員が、国の法律を作る
日本国憲法は、国会を国権の最高機関、国の唯一の立法機関と定める。新しい法律を成立させたり、既存の法律を改めたりする中心は国会である。
日本には衆議院と参議院があり、原則としてそれぞれの議院で議案を審議し、両院の議決によって法律が成立する。ただし、衆議院の再可決など、両院の意見が異なる場合の特別な手続きも憲法に設けられている。
衆議院の議員には任期があり、解散によって選挙が行われることもある。参議院は解散がなく、議員の半数が3年ごとに改選される。二つの議院は、同じ国民を代表しながら、選挙の周期と権限に違いがある。
では、法律の内容は国会議員だけが考えるのか。実際には内閣が法律案を提出することも多い。行政で必要な制度を考えた各省庁が法案の立案に関わり、内閣が国会に提出する。法律を提出する側と成立させる側が、必ずしも同じ機関ではないのだ。
国会が首相を選ぶ仕組み
日本では国民が首相本人を全国一斉の直接投票で選ぶ制度ではない。国会が国会議員の中から内閣総理大臣を指名し、天皇が国会の指名に基づいて任命する。
首相は国務大臣を任命して内閣を構成する。内閣は法律を執行し、外交関係を処理し、国の行政機関を統括する。日々の政策を実際の事業に変えるため、各省庁や公務員による行政が必要になる。
しかし首相と内閣は、国会から独立した大統領のような仕組みではない。衆議院が内閣不信任決議を可決した場合、内閣は原則として10日以内に衆議院が解散されない限り総辞職しなければならない。内閣と国会が強く結び付いているのが、日本の議院内閣制の特徴だ。
これに対してアメリカの大統領制では、大統領と議会議員は別の制度で選ばれる。制度が違えば、議会と政府が対立した場合の解決方法も変わる。
裁判所は法律を作るのではなく、法律に基づいて判断する
国会が法律を制定し、内閣が行政を担っても、その行為が憲法に違反していないかという問題は残る。裁判所には、事件の審理を通じて法令や行政行為の憲法適合性を判断する違憲審査権がある。
裁判所は国会の下部組織ではない。司法権は最高裁判所と法律により設置される下級裁判所に属し、行政権からも独立している。
ただし、裁判官を誰が任命するか、判事をどう罷免できるか、といった制度には国会や内閣も関わる。日本では内閣が最高裁長官を指名し、天皇が任命する。長官以外の最高裁判事は内閣が任命する。国会には裁判官を対象とする弾劾裁判所を設ける仕組みもある。
完全に無関係な三つの組織が、勝手に仕事をしているわけではない。互いを監視・抑制しながら権力の集中を防ぐことが、三権分立の狙いなのである。
三つに分けるのは、仕事の分担だけが目的ではない
権力を一人の支配者に集中させれば、迅速に決定できる場合がある。一方、その決定を止めたり、違法性を確かめたりする仕組みがなければ、権力の濫用が起きても修正しにくい。
そのため立法・行政・司法を分け、それぞれが相手に一定の制約をかける設計が生まれた。日本では国会から首相を選び、内閣が衆議院の解散に関わり、裁判所が法律の憲法適合性を判断する。
| 主な機関 | 中心となる役割 | ほかの機関との関係の一例 |
|---|---|---|
| 国会 | 法律を制定し、予算を審議・議決する | 首相の指名、衆議院の内閣不信任決議 |
| 内閣 | 行政権を担い、政策を実行する | 国会への法案提出、衆議院の解散 |
| 裁判所 | 具体的な事件を裁き、違憲審査を行う | 法律や行政処分の憲法適合性を審査 |
ベルギーでは選挙後の政権形成に541日かかったことがあり、スイスでは地域の女性参政権をめぐって最高裁判所の判断が大きな転機になった。外国の政治の実例に目を向けると、政府の成立、議会の議決、裁判所の判断が、それぞれ違う仕事なのだと分かる。
議会も政府も裁判所も、一つにまとめればよいというものではない。政治が動くことと、政治を制限できることを両立させるために、現在の制度は複雑に作られている。