冬の湖に張った氷は水面に浮かぶ。コップに入れた氷も、ほとんどが水の中に沈みながら、一部を水面に出している。
当たり前の光景に見えるが、液体より固体の方が軽いというのは、多くの物質とは逆である。
普通の物質は、固まると縮みやすい
多くの液体では、温度が下がると粒子の運動が弱まり、固体になると粒子同士が近く並ぶ。その結果、同じ質量なら体積が小さくなり、密度が高まる場合が多い。
水も温度が下がると密度が増していくが、約4℃付近で最も密度が高くなり、それより冷たくなると再び密度が下がる。
さらに凍ると、水分子は水素結合によって比較的すき間の多い結晶構造を作る。そのため同じ量の水が氷になると体積が増える。
米国地質調査所によると、凍結によって密度はおよそ9%低下する。だから氷は液体の水より軽くなり、浮く。
湖の底まで一度に凍らない理由
秋から冬にかけて湖面が冷えると、比較的冷たくて重い水が沈み、温かい水と混ざりやすい。しかし水温が約4℃より低くなると、水はそれ以上冷えても重くならない。
より冷たい水は表面付近にとどまり、やがて0℃付近で凍る。氷は浮いて表面を覆い、下の水と冷たい外気の間を隔てる。
もし氷が沈む物質だったらどうなるだろう。表面で生まれた氷が次々と沈み、湖の内部まで凍りやすくなるかもしれない。
もちろん実際の湖の凍結は、水深、風、塩分、流れなどの条件にも左右される。それでも水が4℃付近で最も密になり、氷が浮くことは、水域の環境に大きな影響を与える。
水の性質は、生き物の世界も変えている
湖の氷の下にも液体の水が残ることで、魚や微生物が冬を越せる環境が保たれる。氷の表面は断熱材としての役割もある。
水は身近な物質だが、密度の変化だけでも多くの例外的な特徴を持っている。冷凍庫で水を満たしすぎた容器が壊れることがあるのも、凍ると体積が増えるためだ。
氷が水に浮くという小さな事実は、水分子の結び付きと、地球の湖で生き物が冬を越す条件をつないでいる。