白い南極の氷に、茶色い汚れがある。
人工衛星の画像を調べる研究者にとって、その汚れは見逃せない目印だ。コウテイペンギンが集まり、ふんを重ねて残した跡かもしれないからである。
遠い繁殖地へ人がたどり着くより先に、宇宙からその存在を探せる。しかも、鳥の姿を一羽ずつ見分ける必要がない。
小さな鳥より、大きな跡
コウテイペンギンの繁殖地は、南極沿岸の海氷上に広がる。厳しい寒さと遠さのため、人が調べに行くのは簡単ではない。
衛星画像でも、鳥の姿は小さい。白黒の体は氷や影に紛れ、低い解像度では見分けにくい。ところが大群が長く滞在すると、ふんが氷を茶色く染める。その広がりなら捉えられる。
ESAが2020年に紹介した調査では、1画素が地上の10メートルに相当するセンチネル2の画像を使っていた。この大きさの画素では個々のペンギンは小さすぎるが、まとまった汚れは位置を知らせてくれる。
大陸を一度に探す方法になった
英国南極観測局のピーター・フレットウェルとフィリップ・トラサンは、南極沿岸の海氷の約85〜95%を画像で調べ、2009年に結果を報告した。
使ったのは、ランドサットが撮った画像をつないだ南極のモザイク画像などである。調査で見つかった繁殖地は38か所。そのうち10か所は新しく確認された場所で、従来の位置から10キロ以上ずれていた場所もあった。
画像で候補を見つけた後には、基地の職員や現地を訪れる事業者による確認も行われた。衛星を見れば自動で答えが出るのではなく、画像と現場の情報を結び付けて、繁殖地の地図を描き直したのである。
汚れの広さは、そのまま羽数にはならない
この方法が教えてくれるのは、まずペンギンが集まった場所だ。
2009年の調査では、小さな繁殖地を捉えにくいという限界があった。また、群れが密集する冬と、ひなが生まれて広がる春では、ふんの跡の広がり方も変わる。汚れの面積だけから羽数を決めることはできない。
それでも探索の範囲は大きく広がった。2024年にも英国南極観測局は、衛星から新たに4か所の繁殖地を確認したと発表している。センチネル2の画像を、さらに高解像度の衛星画像と比較して確かめた結果だった。
海氷は季節ごとに変わり、ペンギンの集まる場所も動く。白い氷の上に残された茶色い跡を追うことで、人が普段立ち入れない海岸で、鳥たちがどこに集まっているかが少しずつ見えてくる。