晴れたパリの空の下で、エッフェル塔はゆっくり形を変えている。日差しを受けた側が温まり、反対側よりも膨張するため、塔は太陽から離れる向きへわずかに傾く。
風に揺らされた瞬間の動きとは違う。太陽の位置が変わるにつれ、温まる面も変わり、塔の頂上が描く軌跡も移っていく。

エッフェル塔。撮影:Chris Coudron/Wikimedia Commons/CC0 1.0。
同じ鉄でも、日なた側のほうが伸びる
金属は一般に、温度が上がると膨張し、下がると収縮する。物体が長ければ、小さな割合の伸びでも、全体では無視できない長さになる。
塔全体がほぼ一様に温まれば、主に全体の寸法が変わる。一方、太陽光は塔の四方を同じようには照らさない。日差しを受ける面と、日陰になる面に温度差が生まれる。
その結果、一方の部材がもう一方より伸び、つながっている構造全体が少し曲がる。二本の長さの違う脚で、上にあるものを支える場面を考えると、傾きが生じる理由をつかみやすい。
塔の運営会社によれば、晴れた一日の太陽の移動に伴い、頂上が直径約15センチメートルの、おおむね円を描くような軌跡を動くことがある。この15センチという値は、太陽による頂上の移動の説明に使われている。
大きな構造物には、動ける余地が必要になる
熱膨張は橋や配管でも起きる。橋の継ぎ目に伸縮を受け入れる仕組みを設けるのは、温度変化で長さが変わるためだ。伸びようとする材料を強く拘束すれば、内部に力が生じる。
エッフェル塔の小さな変形も、金属構造物として自然な振る舞いであり、通常の観光では目で追えるほどの動きではない。日が傾き、照らされる面が移り、鉄の温度が変わる。その間にも、頂上の位置は少しずつ変わっている。