銀色の金属片が、温められるうちに輪郭を失い、つやのある液体へ変わっていく。ガリウムなら、この変化を手の熱でも起こせる。融点は約29.8℃。暑い部屋では、置いてあるだけで溶けることさえある。
20℃では固体で、30℃を少し超えると液体になる。金属を溶かすのに炉が必要だという感覚が、この元素には通用しない。

ガリウムの結晶。撮影:foobar/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。
溶けやすさと、蒸発しやすさは別の性質
ところが、ガリウムをさらに加熱しても、すぐには沸騰しない。通常の大気圧では、沸点は2000℃を超える。水なら融点0℃から沸点100℃までの差は100℃だが、ガリウムには液体でいられる範囲が2000℃以上もある。
固体が溶けるとき、原子は整った結晶の配置から離れ、互いの位置を変えられるようになる。気体になるには、原子が液体から離れて飛び出さなければならない。この二つの変化に必要な条件は異なるため、融点が低くても、沸点まで低いとは限らない。
手の熱で形を失うほど溶けやすく、それでいて非常に高温まで液体でいられる。その組み合わせが、ガリウムの目を引く性質である。
発見される前から、周期表に居場所があった
ガリウムが見つかったのは1875年。フランスの化学者ルコック・ド・ボアボードランが、鉱石の試料から未知の元素を示す光の線を見いだした。
それに先立つ1871年、メンデレーエフは周期表の空欄から、まだ見つかっていない元素の性質を予測していた。アルミニウムの下に入るはずの元素で、予測された密度は1立方センチメートル当たり約5.9グラム。後に確認されたガリウムの値とよく一致する。
現在は、ガリウムを含む化合物が半導体や発光ダイオードに使われている。ヒ素と結び付いたガリウムヒ素、窒素と結び付いた窒化ガリウムなどだ。銀色の金属が手の中で溶ける姿と、光や電気を扱う電子部品。どちらにも、同じ原子番号31の元素が使われている。