パリの地下にあるカタコンブでは、頭蓋骨や大腿骨が壁のように並んでいる。地下の迷宮で人を驚かせるためにつくられた施設に見えるが、始まりは18世紀の都市が抱えた現実的な問題だった。
パリでは人口が増え、古い墓地が過密になって衛生上の懸念が生じていた。その対策として、墓地に埋められていた遺骨を地下へ移す計画が進められる。使われたのは、かつて建築用の石材を切り出した地下採石場の空間だった。
1780年代から遺骨の移送が始まり、長い年月をかけて何百万もの人々の骨が集められたとされる。後には骨が整然と並べ直され、通路には死や人生を考えさせる文章なども加えられた。現在見学できるカタコンブの姿には、墓地問題への対処と、のちの展示の歴史が重なっている。
地上で大きく発展した都市の下には、街をつくるために掘った地下坑道がある。その空間が、今度は街の死者を収める場所になった。パリの地下は、都市の別の歴史が積み重なった場所だ。
