鉛筆で字を書くたびに、芯は少しずつ減っていきます。紙に残る黒い線は、芯から離れた細かな粒。この柔らかな材料が黒鉛です。
一方、宝石のダイヤモンドは、ほかの材料を削る研磨材にもなるほどの硬さ。ずいぶん違って見える二つですが、どちらも炭素からできています。
違いを生むのは、原子のつながり方。材料が同じでも、組み上がる構造が変わると、硬さや電気の通し方まで変わります。

ダイヤモンドと黒鉛、結晶構造の比較。作成:Itubほか(元画像の作者は画像ページ参照)/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。
立体の網目と、重なったシート
ダイヤモンドでは、一つの炭素原子が、周りの四つの炭素原子と強く結び付いています。四つの相手は平面ではなく、立体的な方向に並び、その先でも同じ結び付きが続きます。
結晶全体が、三次元につながった丈夫な網目。その表面を傷つけたり変形させたりするには、強い結合でできた構造を崩さなければなりません。
黒鉛のほうは、一つの原子が同じ面にある三つの炭素原子と結び付き、六角形の網目を広げています。それが薄いシートになって、何層も重なった姿を想像すると近いでしょう。
シートの中の結合は強くても、シート同士をつなぎ止める力はずっと弱い。そのため層がずれたり剥がれたりしやすく、紙にこすり付けるだけで、その一部が離れて残ります。鉛筆で字が書けるのも、この性質のおかげです。
芯の硬さは、混ぜる粘土でも変わる
鉛筆の芯には、黒鉛に加えて、硬さを調整する粘土なども使われます。一般に粘土の割合を増やすと芯が硬くなり、紙へ移る黒鉛の量も少なくなります。同じ黒鉛を使っても、配合次第で書き味は変わるわけです。
黒鉛とダイヤモンドでは、電気の通しやすさにも違いがあります。黒鉛には層の中を動ける電子があり、電気を通しやすいのに対し、純粋なダイヤモンドは通しにくい性質。
宝石店で見る輝きと、ノートに残る黒い線。そのどちらにも炭素が使われていますが、原子の並びを拡大してみると、まったく違う構造が現れます。