1セントの硬貨を1枚作るのに、1.6セントかかる。カナダ政府は2012年の予算文書で、こんな数字を公表した。
硬貨の表面には1セントと刻まれている。しかし、その硬貨を作る政府の費用は額面より高かった。小さな硬貨が大量に使われていると、製造と流通の費用も積み重なる。
カナダはこの年、1セント硬貨の製造・供給を終了する方針を示した。
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カナダの1セント硬貨。撮影:Robbie Sproule / Wikimedia Commons / CC BY 2.0(表示用に縮小)。
額面より高い金属を使っているわけではない
硬貨を作る費用には金属の材料費だけでなく、加工や品質管理などの費用も関わる。政府が1セントを使えるようにするには、製造だけでなく運搬や保管、回収の手間も生じる。
その一方で、物価が上がれば1セントで買える物は少なくなる。以前は買い物に便利だった小さな単位の硬貨も、日常では使い道が減っていく。
カナダ政府は1セント硬貨の購買力が弱まり、製造費が1枚当たり約1.6セントに達したことを理由に、硬貨の供給をやめる方針を説明した。
ただし硬貨の価値がなくなったわけではない。すでに流通している1セント硬貨は、その後も法的には価値を持ち続けた。
1セントがなくなったら、値段はどうするのか
たとえばレジの合計が10ドル2セントになったとする。1セント硬貨を使わず、5セント単位の硬貨だけで支払うなら、2セントの端数をどうするか。
カナダで導入された方法は、現金で支払う最終的な合計額を5セント単位に丸めることだった。
合計金額の末尾が1・2・6・7セントなら下へ、3・4・8・9セントなら上へ、最も近い5セントに丸める。たとえば10ドル2セントの合計は、現金で払う場合は10ドルになる。
ここで重要なのは、商品一つひとつの値札を変更する制度ではないということだ。最後に支払う合計金額を丸める。
さらに、クレジットカードや電子決済など、正確なセント単位の計算ができる支払いでは、端数を丸める必要がない。
硬貨の単位をなくしても、計算の単位は残る
この出来事は、硬貨という物体と、お金を計算する単位が別のものだと教えてくれる。
1セント硬貨を新しく作らなくなっても、銀行口座や支払データの中から1セントという単位が消えたわけではない。小さな硬貨は経済の効率を下げることがあり、計算上は小さな単位を残したまま、物理的な貨幣だけを減らせる。
かつてスウェーデンでは、約20kgの銅貨が作られた。大きすぎる貨幣も、小さすぎて作る費用がかさむ貨幣も、使いやすさの問題を抱えていた。
お金は金属の重さや額面だけでなく、実際の取引で便利に使えるかどうかによって姿を変えていく。