ハチが小さな木の球を前脚で押し、ころころ転がす。餌を運んでいるわけでも、巣を作っているわけでもない。目の前にある球を動かし、また別の球へ向かう。
2022年、マルハナバチを使った研究で、こんな行動が報告された。昆虫が遊ぶような行動を見せることを、実験で調べたものだ。
お菓子のご褒美は用意していない
イギリスの研究チームは、マルハナバチが巣から餌場へ向かう通路に、小さな木の球を並べた。球は自由に転がせるものと、動かないように固定されたものがあった。
ハチは餌を得るためなら球に触れずに通り過ぎてもよい。それなのに、球を転がす個体が現れた。研究では45匹のハチが計910回、球を転がす行動を記録している。
しかも若いハチほど多く転がす傾向があった。哺乳類の子どもが遊びを好む様子を思わせるが、もちろん人間と同じ気持ちかどうかはわからない。
なぜ「遊び」だと考えられるのか
動物の行動を研究するとき、何かを動かしただけで遊んでいるとは判断しない。食べ物を探すためかもしれないし、身を守るためかもしれない。
今回の実験では、球を転がしても餌が手に入るわけではなく、巣作りにも役立たなかった。研究者らは、行動の自発性や繰り返し方、状況などを調べ、動物の遊びに使われる判定基準を満たすと結論づけた。
ハチに人間と同じ「楽しい」という感覚があるかどうかまでは、実験だけでは言い切れない。しかし小さな昆虫でも、食事や繁殖とすぐ結び付かない活動を自分から繰り返すことがある。
動物の遊びを考えるとき、犬や猫ばかりを見る必要はないのかもしれない。