南米ペルーの熱帯林で、小さなクモの巣をのぞくと、妙なものがぶら下がっていることがある。
巣の中央に見えるのは、大きな脚を広げたクモのような形。しかしそれは本物のクモではない。糸、枯れ葉、昆虫の死骸などを組み合わせてつくられた偽物なのである。
本物の小さなクモは、偽物のそばに隠れていたり、その上に乗っていたりする。
クモが自分より大きなクモをつくる
この行動が確認されたのは、ゴミグモ属 Cyclosa の仲間だ。彼らは巣に捕食した昆虫の残骸や植物片を取り付けることがあり、もともと変わった巣飾りで知られていた。
ところがペルーなどで観察された個体は、残骸をただ積み上げるのではなく、中央に胴体らしい部分をつくり、そこから脚のような細い構造を伸ばしていた。離れて見ると、本体よりはるかに大きなクモに見える。
2012年頃から研究者らが行動を観察してきたが、2025年に発表された研究は、ペルーとフィリピンのクモがこうしたクモ形の巣飾りをつくることを、学術論文として詳しく報告した。
偽物を揺らして見せることも
巣飾りをつくる理由については、天敵への対策だという仮説がある。
小さなクモを食べる虫や鳥が、巣に大きなクモのような影を見つければ、近づくのをためらうかもしれない。あるいは偽物の方へ攻撃が向かえば、本物は逃げられる。
ペルーのクモでは、偽物の上にいたクモが巣を揺らし、大きなクモが動いているように見せる行動も観察された。
ただし、偽物によって生存率がどれほど上がるのか、天敵が実際に何を見てどう反応しているのかは、まだ十分に検証されていない。研究者らも、見かけがクモに似ていることと、その役割が証明されたことは区別している。
巣は獲物を捕らえるだけの道具ではない
クモの巣は、飛んでくる虫を捕らえる網だと考えられがちだ。しかし実際には、巣の糸には振動を伝えたり、身を隠したり、天敵を避けたりする役割もある。
ゴミグモの一部は、巣に残った小さなゴミまで使って、自分より大きな影をつくってしまう。巣の中央にいるように見えたクモが、実はクモ自身による偽物だった。