1884年、ニューヨークの高級宝飾店ティファニーに、小さな金属のピラミッドが展示された。素材は金でも銀でもなく、アルミニウムだった。
今なら飲料缶や台所のホイルでおなじみの金属である。しかし、このピラミッドはアメリカ初代大統領を記念する塔の、最も高い場所を飾るために作られていた。

ワシントン記念塔の先端。写真:NOAA/Wikimedia Commons/パブリックドメイン。
地中には多くても、取り出すのが難しかった
アルミニウムは地殻に豊富に含まれる。にもかかわらず、19世紀には高価だった。鉱石の中で酸素などと強く結び付いており、金属として取り出すのに手間も費用もかかったからだ。
国立公園局によれば、塔が完成した1884年にもアルミニウムは銀に匹敵する価格で取引されていた。建設を担当した側が先端の素材に選んだのは、当時としては珍しく、価値の高い金属だったのである。
製作を引き受けたウィリアム・フリッシュムスは、長年アルミニウムの精製を研究していた。完成した先端は高さ約23センチ、重さ約2.8キログラム。大きな塔の上に載せればごく小さく見えるが、その時代にこれだけのアルミニウムを鋳造すること自体が難事業だった。
彼は納品前、許可を得ずにティファニーへ展示してしまう。建設担当者との電報のやり取りを経て、品物はようやくワシントンへ送られた。先端が塔に取り付けられたのは、1884年12月6日である。
完成から2年足らずで、安く作る道が開けた
1886年、アメリカのチャールズ・マーティン・ホールと、フランスのポール・エルーが、ほぼ同じ時期にアルミニウム製造の重要な方法へ到達する。
酸化アルミニウムを溶けた氷晶石に溶かし、電気を流して金属を取り出す方法だ。大量生産へ向かう技術が整うにつれ、アルミニウムは特別な品物の素材から、日用品や工業製品に広く使われる材料へ変わっていった。
記念塔の先端は、その変化の直前に作られた。地上から見上げても素材まではわからない小さなピラミッドが、宝飾店に並ぶほど珍しかった金属の時代を残している。