ハエトリソウの葉の内側には、細い感覚毛がある。虫が触れると、葉は素早く閉じる。
ただし、感覚毛を一度刺激しただけなら、普通は何も起きない。最初の刺激からおよそ30秒以内に次の刺激が加わると、閉じる反応が起きる。間が空きすぎれば、葉は開いたままだ。
動かずに待っている間も、細胞の中には一度目の接触の痕跡が残っている。

撮影:Mmparedes(2007年)/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.5
植物の中を、接触の合図が走る
感覚毛が曲げられると、電気信号が生まれ、葉へ伝わる。この信号に伴って、細胞内のカルシウムイオン濃度も上昇する。
最初の刺激で上がった濃度は、その後、時間とともに下がっていく。まだ十分に下がらないうちに次の刺激が来ると、濃度の上昇が重なり、葉を閉じる反応を起こす水準を超える。
一度触れられたことを残す仕組みと、しばらくするとその影響が薄れる仕組みが、同じ濃度変化でつながっている。
2020年の研究は、この様子を光として観察した。カルシウム濃度に応じて光るタンパク質をハエトリソウに作らせ、感覚毛から葉へ広がる変化を追ったのである。
二回という数字より、重なりが効いている
研究では、最初の刺激から時間を空け、二度目の刺激だけでは閉じなくなったところへ、続けてさらに刺激を加える実験も行われた。すると濃度が閉鎖の水準を超え、葉が閉じた。
この結果は、決まった回数だけを機械的に待っているのではなく、刺激が作るカルシウムの変化が積み重なることを示している。
虫が葉の上を動けば、短い間に感覚毛へ何度も接触する。その動きを、葉の中を走る電気信号と細胞内の濃度変化へ変換している。
閉じた後も、虫の動きを受け取る
葉が閉じても、仕事は終わらない。捕まった虫がもがくと、内側の感覚毛がさらに刺激される。
2016年の研究では、この電気信号の積み重なりが、植物ホルモンの応答や消化酵素、栄養を取り込む仕組みの作動に関わることが示された。葉を閉じる段階と、獲物を分解して吸収する段階では、必要となる反応が違う。
外からは、葉がぱちんと閉じる瞬間が最も目立つ。その前には細胞の中で最初の接触がしばらく保たれ、その後には、閉じ込めた虫の動きに応じて消化の準備が進む。葉は動く瞬間だけでなく、待っている間にも獲物からの合図を受け取っている。