雪の結晶を写真に撮り続けたアメリカのウィルソン・ベントレーは、生涯に何千枚もの結晶の姿を残した。板のように平たいもの、針のように細いもの、レース編みのように複雑な枝を持つもの。同じ空から降る雪なのに、見た目は驚くほど違う。
それなのに、星形に育った雪の結晶には、六方向に伸びる形が繰り返し現れる。なぜ五本でも七本でもないのか。
秘密は水分子の配列にある。通常の雪の結晶をつくる氷では、水分子が六角形の対称性を持つ結晶構造に並ぶ。結晶が成長すると、目に見える大きさになっても、その対称性が現れやすい。
一方で、六本の腕の細かな形は、結晶が雲の中でどんな環境を通ったかによって変わる。温度や水蒸気の供給量が違えば、薄い板が育ちやすいことも、針や枝が伸びやすいこともある。落ちながら冷たい層や湿った層を通れば、成長途中で形が変わる。
同じ結晶に付いた腕がよく似ているのは、六本がほぼ同じ時間、同じ周囲の空気にさらされるためだ。しかし完全な鏡写しになるわけではない。細かな成長の差は残る。
ひとつの結晶に、分子レベルの規則と、雲の中を落ちる間の偶然が同居している。ベントレーの写真で面白いのは、六本の腕という共通点よりも、その制約の中で生まれる形の幅広さかもしれない。