竹を前足でつかみ、口元へ運んでかじる。パンダの食事を眺めていると、太い茎も細い枝も、器用に持ち替えています。
その握り方を支えるのが、第6の指と呼ばれる出っ張り。手のひらの親指側にあり、曲げた指との間に竹を挟むのに役立ちます。正体は、手首の骨の一つである橈側種子骨です。

竹を食べるパンダ。撮影:Kevin Dooley/Wikimedia Commons/CC BY 2.0。
手首の骨が、竹を握る支えに
人間なら、親指をほかの指と向かい合わせて物をつまめます。ところが、パンダの5本の指はクマらしく並んでいて、人間と同じつまみ方は苦手。細い竹を握るには、支えがもう一つあると便利です。
パンダでは、ほかのクマなら小さな橈側種子骨が大きく発達し、肉のふくらみに覆われています。ここへ竹を押し当て、指で囲めば、食べている途中に茎が滑り落ちにくくなる仕組みです。
ただ、第6の指だけを、人間の親指のように自由に曲げているわけではありません。解剖やCTによる研究では、手首を深く曲げる動きや、小指側にある別の骨も、竹を囲む空間づくりに関わることがわかっています。

フェイフェイの左前足の骨格。国立科学博物館展示/撮影:Momotarou2012/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。
昔のパンダのほうが、長かった
中国・雲南省で見つかった約600万〜700万年前のパンダの祖先の化石にも、大きくなった橈側種子骨が残っていました。2022年に報告されたその骨は、現生のパンダより長く、先端の形も違っていたそうです。
竹を握るなら、長いほうが便利そうに思えます。けれど、パンダは食事の後には同じ前足を地面に着き、大きな体を支えて歩きます。手のひら側の出っ張りが長過ぎれば、歩くときには邪魔にもなりそうです。
研究者たちは、今の短く先端が曲がった形を、竹を扱うことと歩くことの両方に対応した結果と考えています。竹をつかんでいた手を下ろせば、そのまま歩くための足になる。第6の指の形には、この使い分けも関わっていそうです。