ノルウェーは人口600万人にも満たない北欧の国だ。ところが、政府が長期運用している巨大な基金は、世界の株式市場で存在感を持っている。
運用主体のノルウェー銀行インベストメント・マネジメントによると、この基金は世界の約7100社に投資し、上場企業の株式を平均約1.5%保有している。2026年6月30日時点の資料にも、この数字が示されている。
すべての会社を1.5%ずつ持っているわけではない。しかし世界の多数の会社に少しずつ出資しており、世界経済の成長と大きく結び付いている。

ノルウェーの首都オスロにある国会議事堂。基金の運用は政府の財政制度に結び付いている。画像:Evka W / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(表示用に縮小)。
出発点は北海の石油と天然ガスだった
20世紀後半、ノルウェーでは北海で大規模な石油・ガス資源の開発が進んだ。エネルギーを輸出すれば、国に大きな収入が入る。だが地下の資源には限りがあり、石油価格も変動する。
資源を採掘した年に収入をすべて使ってしまえば、その年の景気は活発になっても、将来に残るものは限られる。収入が急に減ったときに財政が不安定になる危険もある。
ノルウェーは資源収入を国の予算から一定程度切り離して積み立て、海外の株式や債券などへ投資してきた。基金の正式名称は政府年金基金グローバル(Government Pension Fund Global)。年金という名前が付いているが、加入者が個別の口座を持って直接受け取る私的な年金とは仕組みが違う。
なぜノルウェー国内ではなく、世界中の会社の株を買うのか
もし基金の大部分をノルウェー国内だけに投資するとどうなるだろう。国内景気が悪くなれば、税収だけでなく基金の運用成績まで悪化する可能性がある。
そこで基金は、国や企業、業種、通貨を分散させて投資している。海外に広く投資することは、ノルウェー経済だけの変動に強く左右されることを避ける方法の一つだ。
基金が株式を購入すると、その企業の所有者の一部となる。企業は株主総会で取締役の選任などを行い、株式には議決権が付く場合がある。この基金も投資先企業の株主総会で議決権を行使している。
ただし、平均1.5%保有しているからといって、世界の会社の経営をノルウェー政府が自由に決められるわけではない。株式保有の割合は企業ごとに異なり、企業の意思決定にはほかの株主や経営陣、法律などが関わる。
ノルウェー政府年金基金グローバルの資金の流れを単純化したオリジナル模式図。
利益が増えても、そのまま全国民の口座に送金するわけではない
ノルウェーでは基金のお金を個人へ一斉に配るのではなく、財政のルールに従って予算に活用する。そのため基金の運用益は、公共サービスや国家財政を支える力にもなる。
ここがアラスカ州の制度と異なるところだ。アラスカの永久基金からは資格のある住民へ毎年配当が支払われているが、ノルウェーの政府年金基金グローバルは住民全員に同じ額の小切手を送るための基金ではない。
投資である以上、株価の下落、金利の変化、為替変動によって基金の価値は上下する。運用益が毎年保証されているわけでもない。それでも長い期間にわたって資源収入を世界の企業や債券に変えていくことが、財政の長期的な安定を目指す仕組みになっている。
国の地下に眠る石油が、遠く離れた世界の会社の株式へ変わり、将来の公共サービスを支える。そのつながりを数字で示すのが、**約7100社、平均約1.5%**という規模なのである。