1965年、火星へ接近したマリナー4号から、地球へ画像データが届いた。人類が初めて間近に見る火星。その姿が現れるのを、NASAのジェット推進研究所(JPL)の職員たちは待っていた。
ただし、電波がそのまま写真になって出てくるわけではない。届くのは、画像を構成する明るさを表した数字の列だった。正式な処理を待ちきれなかった職員たちは、その数字を印刷した細長い紙を横に並べ、パネルへ貼りつけた。そして数値に応じて、一つずつ手で色を塗っていった。
こうして火星の最初の接近画像の一つは、巨大な塗り絵のような形で現れた。
数字の列から、惑星の姿が浮かぶ
遠い惑星の写真を送るには、明暗を電気信号に変える必要がある。受け取る側で、数字を元の位置に戻し、明るさへ変換すれば、画像を再現できる。
JPLの職員たちが手作業で行ったのも、この変換だった。紙片を並べることで位置をそろえ、数値を色に置き換える。現代の画面表示なら瞬時に行われる処理を、人の目と手で先回りしたのである。
そのため、パネルの赤茶色をそのまま火星の本当の色と読むことはできない。ここで使った色は、受信した明暗の数値を見分けるために割り当てたものだ。写真の下には、今も印刷された数字がびっしり残っている。
火星の想像図が、実際の観測に変わった
マリナー4号は1964年11月に打ち上げられ、翌年7月に火星へ接近した。撮影された22枚の画像には、クレーターのある地表が写っていた。
地球からの望遠鏡観測では見分けられなかった地形を、探査機が近くから送ってくる。火星の表面を考えるための材料が、一気に具体的になった。
手で塗られたパネルは額に収められ、JPL所長のウィリアム・ピカリングに贈られた。宇宙から届いたデジタルデータと、紙片に色を塗る作業。その二つが同居した姿に、惑星探査が始まった時代の興奮が残っている。