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軍隊を持たないアイスランドは、漁業をめぐってイギリス海軍と争った

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更新日:2026-10-31

冷戦の時代、北大西洋で軍艦と小さな沿岸警備船が衝突する事件が続いた。片方は世界有数の海軍を持つイギリス。もう片方は、独自の常備軍さえ持たないアイスランドだった。

争いの原因は石油でも領土でもなく、タラだった。

1958年から1976年にかけて、両国は漁業権をめぐって三度の対立を繰り返した。「タラ戦争」と呼ばれる出来事である。

漁業はアイスランドの生活そのものだった

アイスランドは人口の少ない島国で、長い間、水産物の輸出が経済の大きな柱を占めていた。近海のタラは収入と雇用を支える重要な資源だった。

しかしイギリスの大型トロール漁船も、昔からアイスランド周辺で漁をしていた。両国は同じ魚をめぐって競争する関係にあった。

1958年、アイスランドは漁業を規制する海域を岸から12海里まで拡大した。イギリスはそれに反発し、漁船を守るため海軍を派遣する。アイスランドの沿岸警備隊はイギリスの漁船を取り締まり、両者の船が接近する事態が起きた。

その後もアイスランドは規制海域を50海里、さらに200海里へ広げようとした。

網のワイヤーを切る装置まで登場

アイスランド沿岸警備隊は、イギリス漁船の漁網を支えるワイヤーを切断する特殊な装置を使用した。漁船が魚を取れないようにするためだ。イギリスは海軍艦艇を護衛に向かわせ、船同士がぶつかって損傷する事件も起こった。

双方はNATOの加盟国だった。つまり、同盟国の軍艦と沿岸警備船が、漁業資源のために海上で対立していたのである。

アイスランドはNATOからの脱退さえ示唆し、問題は安全保障上の交渉にも発展した。最終的にはイギリスが大幅に譲歩し、アイスランドの200海里の漁業管轄権を認める方向で決着した。

その後、国際海洋法の枠組みでも200海里の排他的経済水域が一般化していく。

巨大な海軍を持つ国に、小さな国が軍事力で勝ったわけではない。漁業の重要性と同盟関係、北大西洋の戦略的な位置が交渉を動かした。アイスランドのタラは、それほど国家にとって大切な資源だった。

REFERENCES

参考文献・出典

  1. Iceland and NATO ↗NATO
  2. Icy fishing: UK and Iceland fish stock disputes ↗UK House of Commons Library
  3. How 'cod war' came: The origins of the Anglo-Icelandic fisheries dispute ↗Historical Research, 77(198), 543–574 (2004)

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