2008年、人口約32万人のアイスランドでは、国の主要銀行3行の資産が、国内で一年間に生み出される付加価値、つまりGDPの約10倍にまで膨らんでいた。
銀行が大きくなることは普通なら歓迎される。多くの企業にお金を貸し、海外の顧客も集められるのだから。しかしアイスランドでは、銀行の成功が国全体を危機にさらすことになった。
小さな島国の銀行が、海外で大きくなりすぎた
アイスランドは漁業や地熱などで知られる北大西洋の国だ。国内市場は小さいが、2000年代には金融業が急成長した。銀行が海外で企業を買収し、外国の顧客から資金を集め、国内経済とは比べものにならない規模に膨らんでいった。
国内だけで事業をしていれば、人口32万人の国でこれほど大きな銀行は必要ない。巨大化を可能にしたのは、国境を越えて資金を集め、貸し付ける仕組みだった。
ただし、銀行の資産がGDPの10倍という数字は、銀行がGDPの10倍の損失を出したという意味ではない。銀行が保有する貸付金や証券などの残高と、国の年間の経済活動を比較している。異なる数字ではあるが、銀行に問題が起きたとき、国の政府がどれほどの規模を支えなければならないかを考える手がかりになる。
銀行の本社は小国に、資金の出入りは世界中に
2008年の世界金融危機で、各国の金融機関は互いにお金を貸すことを警戒し始めた。いつもなら借り換えられる資金も、突然調達できなくなる。
アイスランドの銀行は海外から多額の資金を集めていたため、この変化の影響を強く受けた。通貨クローナの価値も急落し、外国通貨で返済しなければならない借金の負担が重くなった。
大国なら中央銀行や政府が支援できる規模でも、アイスランド政府には負担しきれなかった。主要3銀行は相次いで経営破綻に陥る。国は国内の決済や預金を守るために銀行を再編し、IMFからの支援を受け、資本の移動にも制限を設けた。
銀行が海外で急成長していた間、アイスランドは国際金融の成功例として注目されていた。しかし危機の際には、その銀行を最後に支える政府が、人口の少ない島国の政府であることが問題になった。
企業が外国へ進出すれば、会社の規模は国境に縛られずに大きくなれる。一方、税金を集めたり、自国通貨を発行したりする政府の力には限界がある。2008年のアイスランドでは、この二つの規模の差が金融危機の中ではっきり表れた。