1963年11月、アイスランド南岸の沖合で海面から噴煙が立ち上った。海底で始まった噴火によって、火山灰や溶岩が海の上に積み重なり、やがて一つの島になる。スルツェイ島と名付けられたその陸地は、1967年まで続いた噴火によって形づくられた。
島ができるまでの様子を人間が目撃できたこと自体が珍しい。しかし研究者たちにとって、それ以上に貴重だったのは、島に生き物が住み着く過程を最初から観察できることだった。できたばかりの島には森林も畑もなく、植物の種がたまった土もない。そこへ何が、どんな順番でやって来るのか。
1964年の春には、海流に運ばれた種子などが岸に打ち上げられているのが見つかった。翌1965年6月、研究者たちは島で最初の維管束植物の実生を確認する。何もない溶岩と火山灰の島に、植物が一株根付いたのである。以後、風や海流、鳥に運ばれる生き物を追う調査が続けられた。
ユネスコによれば、2004年には60種の維管束植物が記録され、鳥や昆虫、地衣類も調査されている。こうした数字の価値は、単に種類が増えたことだけではない。いつ、どこに、何が現れたかを、島の誕生に近い時期から記録し続けていることにある。
スルツェイ島への立ち入りが厳しく制限されているのもそのためだ。観光客の靴についてきた種子を持ち込めば、自然に到着した植物との区別が難しくなる。生き物のいない島を守ることから始まった研究は、今も人間が手を加えないまま、生態系がつくられていく様子を記録している。
