フィンランドには、人口約560万人に対してサウナが300万~330万室ほどあるとされる。二人に一室に近い計算だが、この数字だけでは暮らしの様子は伝わらない。サウナは立派な温浴施設にあるだけではなく、住宅の一室、集合住宅の共用部分、湖畔の別荘にもある。
フィンランドのサウナでは、熱した石に水をかけて蒸気を立てる「ロウリュ」が重要な役割を持つ。薪で暖める伝統的なサウナもあれば、電気を使う設備もあり、入り方も一様ではない。友人と会話する人もいれば、静かに過ごす人もいる。
ユネスコは2020年、「フィンランドのサウナ文化」を無形文化遺産に登録した。注目されたのは熱い部屋そのものではなく、人々の生活の中で受け継がれてきた知識や習慣だ。サウナの伝統には、かつて出産や体を清める儀礼に関わった歴史もある。
家でサウナに入れることが当たり前なら、観光客が感じる「珍しい体験」とは意味が違ってくる。フィンランドのサウナは特別な娯楽として発明されたものではなく、長い時間をかけて家庭の暮らしに入り込んだ設備でもある。