オーストリアの山を夏に登ると、外では草が緑色に茂っているのに、洞窟の奥には氷の柱や壁が現れる場所がある。アイスリーゼンヴェルトと呼ばれる巨大な洞窟だ。夏なのに地下に氷が残っているのは、氷を運び込んでいるからではない。
洞窟の中には季節によって空気の流れが生まれる。冬の冷たい空気が入り込んで岩や内部を冷やし、雪解け水などが浸み込むと、冷えた場所で凍る。外が暖かくなると空気の流れ方も変わり、奥の冷たい環境が氷を残すのに役立つ。
内部の氷は一年中同じ形をしているわけではない。水が入り込んで凍る場所もあれば、温度や空気の流れが変わって溶ける場所もある。長い時間の中で柱や壁の形が変化していくのだ。
観光客は歩きながら巨大な氷の造形を眺めることができるが、洞窟の中は夏でも非常に冷たい。外の季節と地下の季節がずれているように感じられる理由は、山の内部で起きる空気の動きにある。
