窓ガラスの向こう側を、ヤモリがすいすい登っていきます。爪を引っ掛けられそうな出っ張りもないのに、指を広げて一歩、また一歩。
足を裏側から見ると、指に沿って横向きのひだが並んでいます。さらに拡大した先には、びっしりと生えた細かな毛。壁やガラスに密着できる種類のヤモリは、この毛を使って体を支えています。
ガラス越しに見たヤモリの足。撮影:Bjørn Christian Tørrissen/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。
一本の毛の先が、さらに枝分かれする
足裏の毛は剛毛と呼ばれ、その先端は、さらに小さなへら状の構造へ枝分かれしています。こうして細かく分かれた先端が表面へ近づくと、分子の間に働く小さな引力を利用できます。
その代表が、ファンデルワールス力。一つの接点ではわずかな力でも、多数の先端を表面へ密着させると、体を支えられる大きさになります。
2002年の研究では、トッケイヤモリの指や一本の剛毛を使い、性質の違う表面への付着を調べました。その結果は、ファンデルワールス力による付着を支持するものでした。
毛の材料そのものは、粘着剤のようにべたついていません。細かな先端をたくさん作り、相手の表面へ十分近づける形に、足の働きがあるのです。
次の一歩には、足を外す動きも
しっかり付くだけでは、ヤモリは窓を歩けません。次の場所に足を置くには、今いる場所からすぐに外す必要があります。
付着の状態は、毛の向きや力のかかる方向でも変わります。ヤモリは指を反らすなどして接触を外し、足を前へ。付けることと離すことを、歩くたびに繰り返しています。
この仕組みは、壁を登るロボットの研究にも使われています。ただ、実際の壁には継ぎ目や段差もあるため、付着する材料を作るだけでは不十分。指のように接点を分け、表面に合わせて動かす工夫も必要です。
窓のヤモリを見つけたら、足の裏を追ってみてください。広がっていた指が反り返り、次の場所へ置かれる。その小さな動きのたびに、目には見えない毛の先が付いたり離れたりしています。