世界で最初のウェブサイトを開くと、拍子抜けするほど簡素なページが現れる。写真も動画もなく、「World Wide Web」という見出しの下に、ウェブとは何か、ほかの文書へどう移動するのか、といった説明が並んでいる。
ウェブの最初の仕事は、ウェブ自身の使い方を教えることだった。
現在ではニュースを読んだり、買い物をしたり、動画を見たりするために使われるウェブが、そもそも何のために考え出されたのか。その出発点は、ヨーロッパの巨大な研究所にある。
世界中の研究者が、別々のコンピューターを使っていた
1989年、スイスとフランスの国境にまたがる欧州原子核研究機構CERNで、ティム・バーナーズ=リーは情報を共有する新しい仕組みを提案した。
CERNには多くの国の研究者が集まり、巨大な装置を使って実験を進めていた。研究に必要な説明書や報告書、連絡先などは、異なるコンピューターや別々の文書管理システムに保存されている。資料を探すには、誰がどこへ保存したのかを知る必要があった。
バーナーズ=リーが考えたのは、文書から別の文書へリンクで飛べる仕組みだった。情報が違う場所にあっても、そのつながりをたどれるようにする。今では当たり前のリンクも、当時の多様なコンピューターを横断して動くようにするのは簡単ではなかった。
1990年の終わりには、最初のウェブブラウザーとサーバーが動き始めた。最初のサーバーは、バーナーズ=リーが仕事で使っていたNeXT製のコンピューターだった。最初期のサイトには、ウェブの仕組みだけでなく、自分でサーバーを用意して参加する方法まで書かれた。
公開されたから世界へ広がった
ここで重要なのが、ウェブを使うためのソフトウェアをどう扱うかという問題だった。便利な技術であっても、使うのに高い料金が必要だったり、特定の会社の許可が必要だったりすれば、世界中の人々が自由に参加する仕組みには育ちにくい。
1993年4月30日、CERNはウェブのソフトウェアをパブリックドメインに置くと発表した。その後、より明確なオープンライセンスでも提供する。ウェブの普及を後押しした大きな決定だった。
現在info.cern.chで見られるのは、1991年から一度も変わらず稼働し続けた原本ではない。CERNが2013年から復元した、初期の姿に近いページだ。
最初のウェブサイトに企業の広告や派手な写真がないのは不思議ではない。発明者が目指していたのは、まず研究者が情報を見つけ、互いにつなげられるようにすることだった。世界を変えた技術の最初のページは、その技術への参加方法を説明する実用的な案内だったのである。