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月へ行った宇宙船のプログラムは、人の手で編まれていた

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更新日:2026-10-31

1969年、アポロ11号を月へ導いたコンピューターには、今なら信じられないほど手間のかかる記憶装置が使われていた。プログラムを修正したければ、コンピューター上でファイルを保存し直すだけでは済まない。工場で部品を作り直す必要があった。

その部品は「コア・ロープ・メモリー」と呼ばれる。磁性体でできた小さな輪に、細い針金を通すか、避けるか。配線の違いで0と1を表し、プログラムの命令を固定して記録していた。

MITで設計されたソフトウェアの内容は、工場へ送られ、作業員たちの手によって物理的な配線へ変えられた。製造には女性たちが数多く従事し、針金を通す精密な作業を担った。完成品は小さく、消費電力が少なく、電源を切っても内容が消えない。宇宙船で使うには魅力的だった。

一方で、設計変更には時間がかかる。現代のアプリなら数行の修正で終わることも、アポロでは記憶装置の再製造という工程になる。ソフトウェアの開発には、ロケットの打ち上げに間に合うように製造日程まで考える必要があった。

しかも、飛行中に必要な計算は自動で進めなければならない。限られた容量の中で何を優先し、予期しない状況にどう対応するか。プログラムの設計者たちは、そうした判断を打ち上げ前に徹底して詰めた。

月面着陸を支えたのは、宇宙飛行士の操作だけではない。工場で細い針金を一本ずつ通していた人々の仕事も、地球から38万キロメートル先まで運ばれていた。

REFERENCES

参考文献・出典

  1. The Rope Mother Margaret Hamilton ↗Smithsonian National Air and Space Museum
  2. Behind the scenes of the Apollo mission at MIT ↗MIT News

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