ニュースで「1ドル150円まで円安が進んだ」と聞く。数字が大きくなったのだから円高ではないのか、と一度でも感じたことはないだろうか。
為替レートの数字は、1ドルを手に入れるのに何円必要かを表している。数字が大きいほど、同じ1ドルを買うためにたくさんの円が必要になる。円の価値は下がっているのだ。

教育用途で撮影された現行千円紙幣の裏面画像。撮影・出典:RegoParkRen / Wikimedia Commons / CC BY 4.0(表示用に縮小)
1万円をドルに替えてみる
1ドル100円なら、1万円は100ドルと交換できる。1ドル150円になれば、同じ1万円は約66.7ドルにしかならない。円の数字が100から150へ上がったのに、円で買えるドルは減っている。
反対に1ドル80円なら、1万円で125ドルを買える。これが円高だ。円高・円安は円そのものの値段ではなく、ほかの通貨と比べた価値の話なのである。
なぜ金利が高い国の通貨が買われやすいのか
為替は政府が毎日決める数字ではない。変動相場制の下では、多くの取引参加者の売買によって変わる。
金利の高い通貨を持てば、低い通貨より大きな利息を得られる可能性がある。このため、金利差が広がると高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売る動きが起きうる。
ただし「金利が高い国の通貨は必ず上がる」は誤りだ。将来の金利見通し、インフレ、景気、リスクへの警戒、投資家の期待などが重なる。2025年に日本銀行が公表した研究では、2021年からの特定期間の円安に米国金利が大きく関わった一方、いつでも金利差だけで為替を説明できるわけではないことも示されている。
円安は日本にとって得か損か
輸入品をドルで買う企業にとっては、ドルを用意するための円が多く必要になり、価格上昇につながりやすい。一方、海外でドルの売上を得る企業は、それを円に換算した金額が増える場合がある。
しかし原材料を海外から仕入れる輸出企業もある。輸入価格上昇の影響、契約通貨、海外生産比率、賃金の動きまで考えると、円安だけで日本全体の勝ち負けは決まらない。
「1ドル150円」という見慣れた数字の裏には、輸入品の価格、企業の利益、旅行費用、世界中の投資家の判断が折り重なっている。