ひとくち雑学 · 宇宙・地球

天王星の極では、太陽が約42年間沈まない――横倒しの惑星の季節

この記事の目次
更新日:2026-10-31

1986年1月24日、NASAの探査機ボイジャー2号は天王星のそばを通過した。送られてきた画像には、淡い青色の丸い惑星が写っている。目立つ雲の模様は少なく、遠目には静かな球に見える。しかし、その惑星の季節は地球と大きく違っていた。

天王星は、回転する軸が大きく傾いている。地球の自転軸は公転面に対する垂直方向から約23.4度傾いているが、天王星では約97.8度。横倒しに近い向きで太陽の周りを回っている。

NASAの探査機が撮影した淡い青色の天王星

1986年にボイジャー2号が撮影した天王星。見た目は穏やかだが、自転軸はほぼ横倒し。 写真・出典:NASA/JPL、画像処理版 / Wikimedia Commons / Public domain。

地球の四季は、自転軸が傾いたまま太陽の周りを公転するために生まれる。夏には太陽の光が高い角度から当たり、昼が長くなる。天王星でも原理は同じだが、自転軸がほぼ横倒しなので、ある時期には片方の極が太陽へ大きく向く。反対側の極には、長いあいだ光が届かない。

天王星が太陽を一周するには、地球の時間で約84年かかる。そのため一つの季節はおよそ21年。極の近くでは、太陽が沈まずに照り続ける時期と、昇らない時期がそれぞれ約42年にも及ぶ。地球の北極や南極でも白夜と極夜が起こるが、天王星では公転が非常に長いため、その時間が何十年にも伸びるのである。

ここで興味深いのは、自転そのものは遅くないことだ。天王星は約17時間で一回転する。だが、極が太陽の方向を向いた時期には、何度回転しても太陽の位置が大きく変わらない。惑星がぐるぐる回っているのに、極では太陽が空から消えない時期が続く。

1986年にボイジャー2号が天王星を訪れたとき、南の極は太陽の側を向いていた。探査機から見た天王星の環や衛星も、その独特な軸の向きに従って並んでいた。これは、探査機が観測経路を考えるうえでも特別な条件だった。

なぜ天王星だけがこれほど傾いているのか。太陽系が生まれたころ、地球ほどの大きさの天体と衝突した可能性が一つの説として考えられている。ただし衝突の様子を直接見たわけではなく、惑星の形成と自転の歴史には今も研究が続いている。

天王星には地球のように立てる固い地表がない。私たちが見る青い球は、主に水素やヘリウムなどからなる厚い大気の上層である。その大気では強い風が吹き、雲の状態は太陽からの照射や惑星内部の熱にも影響される。極が明るい時期と暗い時期で、大気の模様も変化していく。

ボイジャー2号が間近に観測したのは1986年の一度きりだ。その後、ハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などが、遠くから天王星の季節や大気を調べ続けている。

淡い青色の円盤が静かに見えるのは、遠く離れた場所から眺めているためだ。その極では、太陽が何十年も沈まず、やがて何十年も姿を消す。地球の一年を何度も過ごす間に、天王星では一つの季節がゆっくり進んでいる。

REFERENCES

参考文献・出典

  1. Uranus: Facts ↗NASA Science
  2. Examining Ice Giants with NASA's Webb Telescope ↗NASA Science
  3. Uranus ↗Canadian Space Agency
  4. 35 Years Ago: Voyager 2 Explores Uranus ↗NASA History
  5. Planetary Voyage ↗NASA Science, Voyager mission

リンク先は外部サイトです。本文は資料を参考に独自に執筆しています。