2007年9月、地球を回る無人宇宙機の外側で、実験装置のふたが開いた。
中に置かれていたのは、乾燥させた小さな動物、クマムシ。宇宙服も、空気を満たした飼育箱もない。真空にさらされる時間は10日間だった。
宇宙機が帰還した後、研究者が水を加えると、生き延びた個体が動き出した。地上の実験室で極端な環境を再現したのではなく、本当に宇宙へ出した動物の結果である。
宇宙へ行く前に、乾燥させておく
実験に使われたのは、Richtersius coronifer と Milnesium tardigradum という2種のクマムシだった。2008年に発表された論文によれば、地上から約258〜281キロの低軌道で、乾燥した成体と卵を調べている。
クマムシの中には、水を失うと体を縮め、代謝を大幅に抑えた状態で耐えるものがいる。実験では、その状態にしてから宇宙へ運んだ。

乾燥状態の Milnesium tardigradum/Schokraie et al.(2012)、明るさ調整:Iezer/Wikimedia Commons/CC BY 2.5
帰還してから水を戻し、脚をそろえて動かせるか、さらに繁殖へ進めるかを調べる。生きているかを確かめる場面は、宇宙機の中ではなく、帰ってきた後の実験室にあった。
日差しを遮るかどうかで、結果が変わった
研究チームは、クマムシをすべて同じ条件に置いたわけではない。真空にさらしつつ太陽の紫外線を遮る群と、紫外線も受ける群を分けた。
紫外線を遮った条件では、2種ともよく生き延び、地上に置いた比較用の個体との間に、生存経過の大きな差は見られなかった。
一方、太陽の紫外線を受けた群では生存が大きく下がった。一部に回復した個体がいたものの、太陽光の条件は結果を左右した。真空への強さと、強い紫外線への強さは、同じではなかったのである。
水を待つ体で、宇宙を通り抜ける
クマムシが普段いるのは、湿った植物や土壌などの身近な環境だ。水があるときに活動し、水を失う時期を耐えしのぐ。その能力を使ったところ、地球の外側に持ち出しても生き延びる例が見つかった。
宇宙で餌を探して歩き回ったわけではない。乾燥した小さな体のまま航海を終え、水が戻ったところで、再び動き出した。その二つの場面の間に、10日間の宇宙空間への露出が挟まっている。