ホタテを食べるとき、貝柱やひもに注目する人は多いだろう。しかし、生きたホタテの貝殻のふちをよく見ると、青く光る小さな点が並んでいる。
あれは目だ。ホタテの仲間には、最大で約200個もの目を持つものがいる。
さらに意外なのは、その目の内部のつくりだ。人間の目は水晶体というレンズで光を集める。一方、ホタテの目は内部の小さな鏡を使って光を集めているのである。
目がたくさん並んでいる理由
ホタテは海底に暮らす二枚貝だが、じっと動かないだけの動物ではない。貝殻を閉じる力で水を噴き出し、短い距離を泳ぐこともできる。
危険が迫ったときには、周囲の動きに気づくことが役に立つ。
ホタテの外套膜という柔らかい部分の縁には、青い粒のような目が多数配置されている。目一つは小さくても、周囲の広い範囲から光を受け取れる。
ただし、人間が景色を一枚のくっきりした写真として見るように、ホタテも世界を見ていると考えるのは早い。何をどこまで見分けているかには、まだわからない部分がある。
目の奥にあるのは、小さな反射望遠鏡
2017年、国際研究チームはホタテの目の内部を詳しく調べた。
その結果、光を反射する部分には、グアニンという物質の薄い結晶が整然と並んでいることが示された。グアニンはDNAなどにも関係する物質だが、ここでは光を反射する構造をつくる材料になっている。
多数の結晶が積み重なった鏡が光を曲げるように反射し、二層になった網膜へ像を結ぶ。研究論文は、こうした鏡の配置が、反射式望遠鏡に使われる分割鏡とよく似ていると説明している。
大型の天体望遠鏡では、複数の鏡を精密に並べて光を集める。同じような光学的な工夫を、小さな貝の目が体内に備えていたのだ。
よく見る貝殻の中に隠れた仕組み
生きたホタテが貝殻をわずかに開くと、外套膜のふちに小さな目が並んでいるのが見える。その一つひとつに光を集める構造がある。
人間には目が二つあり、カメラにはレンズがある。だから動物の目も基本的には同じ仕組みだと思いがちだ。しかし進化の過程では、光をとらえる方法が何度も別々に生まれてきた。
貝柱のそばに並ぶ小さな青い点は、鏡で世界を見る目だった。