砂糖を入れた飲み物は、飲み残して放っておけば傷むことがある。けれど蜂蜜は、常温で長く保存できる食品として知られている。同じように甘いのに、なぜ違うのだろう。
「蜂蜜は何千年たっても腐らない」といった話を見かけることがある。ただし、すべての蜂蜜がどんな状態でも絶対に腐敗しないという意味ではない。そこには、微生物にとって水が使いにくいという、保存性の大きな秘密がある。

実物の蜂蜜と巣の写真。画像:Alabama Extension / Wikimedia Commons / CC0 1.0(表示用に縮小)
甘いだけなら、なぜジュースは傷む?
微生物が増えるには、栄養だけでなく水も必要だ。蜂蜜には糖が非常に多く含まれ、水分は比較的少ない。糖は水を強く引きつけるので、微生物が自由に利用できる水が少なくなる。
ここで重要なのが水分活性という考え方だ。単純に水が何%あるかだけでなく、微生物がその水を使える状態かどうかを見る。蜂蜜のように濃い糖液では、水が存在していても利用しにくい。
蜂蜜は酸性でもある。さらに種類によっては、微生物の増殖を抑える働きに関わる成分もある。保存性は一つの魔法の成分ではなく、複数の条件が重なって生まれている。
それでも保存のしかた次第で傷む
ふたを開けたままにしておくと、蜂蜜は空気中の水分を吸収する。水分が増えれば、酵母などが増えやすくなる条件に近づくことがある。
ペンシルベニア州立大学の食品保存資料は、蜂蜜を乾燥した場所で密閉保存することを勧めている。泡が出たり、アルコールのような臭いがしたりする蜂蜜は、発酵して傷んでいる可能性があり、食べずに捨てるべきだとしている。
反対に、蜂蜜が白く固まったからといって腐敗とは限らない。これは糖が結晶化した状態で、自然に起こりうる。見た目が変わっても、ただちに品質が悪くなったという意味ではない。
「菌が育たない」と「菌が存在しない」は違う
ここが最も誤解してはいけないところだ。蜂蜜の中で微生物が増えにくくても、微生物の芽胞が存在しないとは限らない。
特に注意が必要なのが、乳児ボツリヌス症だ。CDCは、蜂蜜にボツリヌス菌の芽胞が含まれる場合があるため、1歳未満の乳児には蜂蜜を与えないよう明確に呼びかけている。これは蜂蜜を加熱した料理や飲み物に混ぜればよい、という話でもない。
蜂蜜の長い保存性は自然界の巧妙な仕組みだが、「絶対に傷まない」「誰でも安全」という意味ではない。水を奪い合う小さな世界を知ると、一瓶の蜂蜜の見え方が変わってくる。