冷えたご飯を電子レンジへ入れる。火も熱い鉄板も使わず、数分後には湯気が立つ。オーブンのように外から熱い空気を当てているわけでもない。
電子レンジの中では、電波の仲間であるマイクロ波が食べ物に吸収され、熱に変わっている。

撮影・出典:NeoMeesje / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(表示用に縮小)
温めているのは、電波のエネルギー
多くの家庭用電子レンジでは、マグネトロンという装置がマイクロ波を作り、金属製の庫内で反射させる。食べ物に吸収された電磁波のエネルギーは、分子の運動へと移り、熱になる。
水分の多い食材が温まりやすいのは、水分子が電場の変化に応答し、エネルギーを受け取るからだ。食品中のイオンも加熱に関与する場合がある。「電子レンジは水分子の摩擦だけで温める」と言い切るより、食品がマイクロ波を吸収して熱を生むと考えたほうが正確だ。
食べ物を「中から温める」わけではない
電子レンジは食品の中心を狙って熱を発生させる、と説明されることがある。しかしFDAによれば、厚い食品ではマイクロ波のエネルギーは外側に近い部分で主に吸収され、中心部は周囲から伝わる熱で温まる。
だから外は熱いのに中が冷たい、ということが起こる。食品の形や厚さ、含まれる水分の違い、庫内の電磁波の分布も温まりムラを作る。ターンテーブルや攪拌、加熱後の蒸らしは、そのムラを減らすために役立つ。
放射線だから、食品に放射能が残る?
マイクロ波は電磁波だが、X線のような電離放射線ではない。正常な電子レンジの使用によって、食品が放射性になるわけではない。加熱後の食べ物が持つのは熱エネルギーであり、マイクロ波が食品に保存され続けるわけではない。
一方で、マイクロ波は体の組織も加熱できるため、機器の扉や密閉構造は大切だ。扉やパッキンが壊れた機器は使用を避ける。金属容器や金属の飾りのある食器は火花などの原因になることがあるため、必ず製品の説明書に従おう。
電子レンジは魔法の箱ではない。見えない電磁波のエネルギーを、料理の熱へ移す装置なのである。