ウクライナの首都キーウで地下鉄アルセナーリナ駅へ向かうと、地下へ降りるエスカレーターがなかなか終わらない。ホームは地表から約105メートル下にあり、途中のホールを挟んで長いエスカレーターを乗り継ぐ。
この深さには、キーウの地形が関わる。駅はドニプロ川を見下ろす高台の地中にあり、路線は地下深くを通る必要があった。1960年に開業した駅の建設では、深い地層にトンネルやホームをつくる技術が使われた。
普段は通勤客が使う地下の空間だが、2022年のロシアによる全面侵攻以降、キーウの地下鉄駅は空襲から避難するための場所にもなった。地下深い場所の価値が、交通の利便性だけでなく安全にも結びついたのである。
長いエスカレーターは観光客が驚くものかもしれない。しかし、毎日その駅を使う人々にとっては移動の一部であり、非常時には身を守るための空間でもある。
