2016年1月30日、スロベニアのポストイナ鍾乳洞にある水槽のガラスに、一つの卵が見つかった。産んだのはホライモリという両生類。白っぽい細長い体に、外へ伸びた赤いえらを持つ、地下水の暗闇に暮らす生き物だ。昔の人々が洞窟のドラゴンの子と想像したという伝承から、「ドラゴンの赤ちゃん」とも呼ばれている。
その後、メスは次々と卵を産み、合計64個になった。ふだんなら人目に触れない繁殖を観察できるめったにない機会だ。洞窟の研究者たちは水槽を暗く保ち、赤外線カメラで卵の発育を追った。
5月30日には最初の幼体が孵化した。ポストイナ洞窟公園の記録によると、7月14日までに合計22匹が誕生した。洞窟の中では繁殖を直接観察することが難しいため、卵から幼体が出る過程を映像に残せたことにも大きな意味があった。
ホライモリは地下の暗い水に適応しており、成長しても外側のえらを残す。目は退化し、視覚以外の感覚が重要な役割を果たす。繁殖も頻繁ではなく、長い期間にわたって研究者が見守る必要がある。
この22匹は、その後も特別な環境で育てられている。洞窟の奥でひっそり暮らす小さな動物の生活史を知るために、たった一度の繁殖が貴重な観察記録になった。
