フランス大統領が就任すると、本人にはもう一つ国家元首としての役割が生まれる。ピレネー山脈の小国アンドラの「共同公」だ。同じ地位を分け合う相手は、スペインのウルヘル司教区の司教である。大統領とカトリックの司教が、同じ国の共同国家元首を務めている。
この不思議な仕組みは、中世の領主間の争いにさかのぼる。1278年、アンドラの権限を二者で分ける取り決めが結ばれ、共同統治の枠組みが生まれた。一方の権利は後のフランスの王権を経て大統領へ受け継がれ、もう一方はウルヘル司教に残された。
もちろん現在のアンドラが、フランスとスペインに半分ずつ支配されているという意味ではない。独自の憲法や議会、政府を持つ独立国で、共同公が行使できる権限も憲法で定められている。
隣の国の選挙でフランス大統領が交代すれば、アンドラの共同公の一人も変わる。中世の妥協によって生まれた制度が、現代の共和国大統領と教会の司教を同じ役職につなげている。