方位磁針の赤い針は北を指す。それが何万年も続いてきたから、地球には最初から「磁石の北」と「磁石の南」が決まっているように感じる。しかし地球の歴史をさかのぼると、磁場の向きが逆だった時代が繰り返し現れる。
最後に大きな入れ替わりが起きたのは、およそ77万年前。その証拠を探すために、遠い海底へ行く必要はない。千葉県市原市の養老川沿いには、地磁気逆転の時代を記録した地層が露出している。

2024年に撮影された実際の露頭。画像:MaedaAkihiko / Wikimedia Commons / CC0 1.0(表示用に縮小)
泥や火山岩は、昔の方位磁針になる
地球の磁場は、主として地球の外核にある液体の鉄などの流動によって生まれる。私たちが手に持つ永久磁石と同じ仕組みではない。地球内部の流れが変われば、磁場もゆっくり変化する。
岩石や泥の中には、磁鉄鉱などの小さな磁性鉱物が含まれる。溶岩が冷え固まるとき、また堆積物が形成されるとき、その時代の磁場の向きが岩石に記録される場合がある。地質学者は岩石の残留磁化を測り、はるかな昔の地磁気を読み取る。
海底の岩石を調べると、北向きだった時代と逆向きだった時代の磁気の縞模様が見つかる。これはプレートテクトニクスの成立を支えた重要な証拠の一つでもある。
千葉の地層が「時間のものさし」になった
千葉県の地層は、松山-ブルン地磁気逆転と呼ばれる最後の大きな逆転を記録している。産業技術総合研究所の研究では、逆転の年代を約77万2900年前、誤差約5400年と見積もり、前後の磁場の変化を詳しく復元した。
地磁気の向きは、まるでスイッチを押したように一瞬で反転したわけではない。逆転の前後には磁場が不安定になり、単純な北と南だけでは表せない状態が続いたことが読み取れる。
チバニアンは、地球史を区切る地質年代の名称として正式に採用された。地磁気の逆転記録が、その境界を世界中で見分ける重要な手掛かりになっている。ただし、地質年代の正式な境界と、磁場がちょうど反転する瞬間は、厳密には同じ位置ではない。
次の逆転は、もうすぐ起こるのか
「最後の逆転から約77万年もたったのだから、そろそろ次では」と思うかもしれない。だがUSGSによれば、地磁気逆転には正確な周期がない。長い間隔が空くことも、比較的短い間隔で続くこともある。
近代的な測定が始まって以来、地表の磁場の強さが平均して弱くなってきたのは事実だ。しかし、磁場の強弱は逆転しない時代にも変動する。現在の変化だけを根拠に、逆転が近いと断言することはできない。
方位磁針が北を指す。そんな当たり前の現象も、地球史の目で見れば、長い変化の途中にある一つの状態なのである。