バナナを一本食べ終わっても、スイカのような大きな種は出てこない。果肉の中央には小さな黒い点が見えることがあるが、普段スーパーで買うバナナに、発芽する硬い種はほとんど入っていない。
では、種がないバナナはどうやって次の世代を増やしているのだろう。
答えは、果実に種をつくらせなくても、新しい株を育てられることにある。
野生のバナナには硬い種がある
バナナの野生の仲間を切ると、果肉の中に黒く硬い種が多数入っているものがある。食べる部分が少なくなるほど、大きな種を持つ種類もいる。
一方、現在栽培されている食用バナナの多くは、種をほとんどつくらずに果実が育つ。こうした株は、長い栽培の歴史の中で人間に選ばれ、増やされてきた。
栽培バナナには、染色体を三組持つ「三倍体」のものが多い。染色体を半分ずつに分けて花粉や卵細胞をつくるとき、三組あるとうまく分配できず、正常な種子ができにくくなる。
果実は育つのに硬い種がないため、人にとって食べやすい。
種をまかずに、株を増やす
バナナの根元には、新しい芽が伸びてくる。この芽を分けて別の場所に植えれば、元の株とよく似た性質を持つバナナを育てられる。
現在の商業栽培では、苗の組織培養なども利用されている。いずれも、種から新しい個体をつくるのではなく、既存の株をもとに増やす方法だ。
この方法は、甘さや形などの特徴をそろえやすい。一方で、遺伝的に似た株が多くなると、特定の病気に弱くなる問題も起こり得る。
私たちがバナナを食べるときに種を気にしなくて済むのは、野生のバナナの特徴と、何世代にもわたる栽培の工夫が結び付いた結果なのである。