東ティモールには、一匹のワニが島へ姿を変えたという伝説がある。弱った小さなワニを少年が助け、成長したワニは少年を背中に乗せて海を旅した。やがて年老いたワニは自分の体を土地へ変え、少年とその子孫が住める島になったという。
当然、島がワニの体から生まれたという地質学的な証拠はない。しかしこの伝説には、人々が自分たちの住む土地と動物をどう結びつけてきたかが表れている。
面白いのは、ワニが物語の中だけの存在ではないことだ。東ティモールの河口や沿岸には実際にイリエワニが生息し、重大な事故を起こすこともある。人々にとってワニは祖先の象徴として敬われる一方、身近な水辺で注意を要する動物でもある。
島の成立を説明する伝説と、現実に暮らす危険な野生動物。その二つが同じワニに結びついているところに、東ティモールの文化の独特さがある。