台湾の住宅街で「エリーゼのために」が聞こえてきたら、ピアノの発表会が始まるとは限らない。黄色いごみ収集車が近づいている合図かもしれない。住民はごみ袋を持って通りへ出て、停車した収集車へ直接ごみを渡す。地域によっては「乙女の祈り」など別の曲が流れることもある。
日本ではごみを決まった集積所へ出しておき、あとから収集車が回収する方式が一般的だ。台湾の多くの地域では、それとは違い、収集車が来たときに住民が袋を渡す。音楽は、車が近づいたことを知らせるための実用的な仕組みになっている。
収集車の近くでは、一般ごみと資源物を分けて渡す様子も見られる。ごみを出すという毎日の作業が、人々の決まった時刻の行動をつくる。2025年の報道では、車を待つ時間に近隣の住民が顔を合わせ、言葉を交わす光景も紹介された。
音楽が鳴るだけではごみは片づかない。指定された時刻に住民が出てきて、分別したごみを引き渡すという協力があって初めて成り立つ。街を流れるクラシック曲が、生活の時間割の一部になっているのである。