ヨルダン川西岸地区のエリコにあるテル・エス・スルタン遺跡には、約1万年前にさかのぼる石の塔が残っている。高さは約8メートル。内部には階段があり、人々が上り下りできる構造になっている。

この時代には、狩猟採集だけでなく、定住や農耕の新しい生活が各地で広がり始めていた。エリコ周辺には水が得られる場所があり、集落の形成に有利な条件があった。金属の道具が一般的になるより前に、人々は石を積み重ね、大きな建造物をつくった。
塔が何のために建てられたのかは、簡単には決められない。防御や共同体の儀礼、集落を象徴する構造物など、研究者の間ではさまざまな説明が提案されてきた。
古代の建築と聞くと王や帝国の名前を連想しがちだ。しかしエリコの塔は、そうした国家が現れるよりはるか以前から、人間が集団で大きな構造物を築いていたことを示している。