死海の水に仰向けに寝ると、普通の海よりも体が浮きやすい。イスラエルとヨルダン、ヨルダン川西岸地区に接するこの湖では、泳ぎが得意でなくても水面に支えられる感覚を味わえる。ただし「絶対に沈まない」という意味ではなく、顔を水につけることには危険がある。

死海は外洋につながらない塩湖だ。周囲から水が流れ込む一方、暑く乾燥した気候のため、水分は大量に蒸発する。塩類は残るので濃度が高くなり、一般的な海水の何倍もの塩分を含む。
塩分が多く溶け込んだ水は、同じ体積でも普通の水より質量が大きい。水の中の物体が受ける浮力は押しのけた水の重さに関係するため、濃い塩水では体が強く押し上げられる。重力が弱くなったわけではないのだ。
しかし、塩水を誤って飲み込んだり、目に入れたりすれば深刻な問題になる。また、死海は周辺地域の取水などの影響で水位低下が続いている。浮く仕組みは身近な物理の話だが、その水をたたえる湖は大きく変わりつつある。