1991年、クウェートの砂漠では多数の油井から炎が噴き上がり、昼間の空が黒い煙に覆われた。湾岸戦争の終盤、撤退するイラク軍が油井に火をつけたためだ。石油とガスが次々に燃え、巨大な火柱が地平線に並んだ。

この火災は普通の建物の火事とは違う。地下の油層から燃料が供給されるため、火を消すには油やガスの流れを止めるなど特殊な作業が必要になる。消火専門チームが危険な場所で作業を続け、最後の油井火災が消えたのは同年11月だった。
黒煙は広い範囲の大気を汚し、流出した油は地面にたまって「油の湖」のような場所をつくった。戦闘が終わっても、汚染や土地の回復に関わる仕事は続いた。
石油はクウェートの経済を支えてきた資源である。その同じ資源が炎と煙になり、国の空と地表に深刻な被害を残した。戦争の影響が、兵器や建物の破壊だけにとどまらないことを示す出来事だった。