アゼルバイジャンの首都バクー近郊には、土の斜面から炎が立ち上がる場所がある。「燃える山」を意味するヤナル・ダグだ。燃えているのは木でも石炭の山でもない。地面の割れ目から染み出す天然ガスが空気中で燃えているのである。

焚き火なら薪がなくなれば消える。ところが地下から燃料が供給され続ける場所では、炎が長い時間続く場合がある。ヤナル・ダグの火は、地下の天然ガスと地表の空気が出会っていることを見せている。
カスピ海沿岸のアプシェロン半島には、古くから石油や天然ガスが地表近くへ出る場所があり、火が宗教や伝承の中で特別な意味を持ってきた。アゼルバイジャンが「火の国」と呼ばれる背景にも、そうした自然環境がある。
ただし、ヤナル・ダグの現在の火が古代から途切れず燃えていたと確定できるわけではない。炎がついた時期については複数の話があり、確かな記録との区別が必要になる。地面から燃料が出てくるという事実だけでも、十分に印象的だ。