カンボジアの国旗には、赤と青の地の中央に白い建物が描かれている。これは架空の宮殿ではない。12世紀に建設された巨大寺院、アンコール・ワットだ。国旗の中へ実際の建築物が置かれている。
アンコール・ワットはかつてのクメール帝国の中心的な宗教建築で、長い回廊には神話や戦いの場面を描いた精巧な彫刻が残る。建設当初はヒンドゥー教の寺院としてつくられ、後に仏教とも強く結びついてきた。
寺院が国家の象徴になっているのは、単に観光客に有名だからではない。古い王国が築いた大規模な建築と文化が、現在の国の歴史の重要な一部として受け止められているからだ。
国旗に描かれた白い塔は、とても簡略化された模様である。しかし、その元になった建物へ行けば、長い回廊と水路、精密な石彫が広がっている。国旗の小さな図柄は、実際の巨大な建築につながっている。