1988年のカルガリー冬季五輪に、カリブ海の島国ジャマイカのボブスレーチームが現れた。雪も氷もほとんどない国から、氷のコースを高速で滑り降りる競技へ挑む。初めてこの話を聞けば、冗談だと思うかもしれない。
ボブスレーではスタートでそりを押し出す走力が重要になる。ジャマイカには陸上競技で速く走る選手の伝統があり、その身体能力を別の競技へ生かすという発想があった。しかし国内に氷のボブスレーコースがあるわけではなく、競技設備や練習環境を確保することは大きな課題だった。
カルガリー大会では四人乗りの走行中に転倒し、最後まで完走できなかった。それでも挑戦は世界の注目を集め、後年の映画『クール・ランニング』の着想にもなった。映画では物語を盛り上げるために脚色されているため、選手たちの実際の経験とは区別して考える必要がある。
雪のない国にも、冬季競技に挑む選手はいる。地理的な不利を完全になくすことは難しいが、競技に必要な能力を別の場所で磨いて参加する道はあり得る。
