グレナダのモリネール湾で海に潜ると、海底に人間の姿をした像が立っている。何人もの人が手をつないで輪になった作品もある。沈没船の残骸でも古代の遺跡でもない。2006年から海中へ設置された彫刻作品だ。
作者のジェイソン・デケアレス・テイラーは、鑑賞する場所として海そのものを選んだ。陸上の美術館とは違い、太陽の光は水中で揺れ、砂の動きで景色が変わり、魚が像の間を泳ぐ。海の生物が像の表面に付着すると、作品の色や形まで少しずつ変わっていく。
海底へ人工物を置くことは、必ずしも自然環境に良いとは限らない。設置する場所や材料、周囲の生態系への影響を考える必要がある。それでも、海を作品の一部として取り入れた発想は、通常の彫刻公園とは大きく違う。
陸上なら、作品は雨や風で変わらないよう保存されることが多い。グレナダでは変化そのものが鑑賞の一部になる。何年かぶりに潜れば、最初とは違う海の生き物が像を覆っているかもしれない。
