干潮のときは広い泥の干潟だった場所が、数時間後には深い水に覆われる。カナダ東部のファンディ湾では、地点と条件によって満潮と干潮の差が15メートル前後にも達する。海岸へ降りる階段の下が、いつまでも陸地だとは限らない。
潮の満ち引きそのものは、月や太陽の引力によって世界の海で起きている。ファンディ湾が特別なのは、細長く奥に入り込んだ湾の形と、水が湾内で揺れる周期の組み合わせにある。潮の周期と湾の固有の振動が近いと、共鳴によって水位の変化が大きくなる。
ブランコを揺れに合わせて押せば、少ない力でも次第に大きく動く。その例えに近いことが、湾の中の大量の海水で起きているのである。潮の高さは月齢や気象条件でも変わるため、どの場所でも常に同じ差になるわけではない。
港を利用する人や海辺の住民は、潮の時刻を知って行動する必要がある。干潮に歩いて行けた場所が帰りには海になっているかもしれない。ファンディ湾では潮汐の知識が、教科書の中だけの話では済まない。
