カリブ海の浅いサンゴ礁の中に、黒に近い濃い青色の円が浮かんでいる。ベリーズ沖のグレート・ブルーホールだ。直径は約300メートルあり、上空から見ると海面に巨大な穴を開けたように見える。
この穴ができたのは、もともと海の中ではなかった時代にさかのぼる。氷河期に海面が今より低かったころ、露出した石灰岩に雨水が入り、長い時間をかけて洞窟をつくった。洞窟の内部には鍾乳石が成長した。ところが氷期が終わって海面が上がると、洞窟は海水に沈み、天井の一部が崩れて巨大な竪穴になったと考えられている。
水中にある鍾乳石は、昔そこに空気のある空間が存在した証拠だ。鍾乳石は通常、天井から水滴が落ちる環境で成長する。現在の海底だけを見ていると不思議に思える地形にも、過去の海面の高さを考えれば説明がつく。
周囲の浅いサンゴ礁は明るい青緑色だが、深い穴の部分では水が光を吸収するため、濃い青に見える。海中の暗い円の底には、海が今より遠くにあった時代の景色が閉じ込められている。
