バハマのエグズーマ諸島にあるビッグ・メジャー・ケイへ船で近づくと、浜辺からブタが海へ入ってくることがある。鼻先を水面から出して泳ぎ、船の方へ寄ってくる。白砂のビーチと青い海にブタの群れという、少し信じがたい組み合わせだ。
ただし、ここにいるのは海で暮らすよう進化した特別なブタではない。もともと島にいた動物でもなく、人間が持ち込んだ家畜の子孫と考えられている。問題は、誰がいつ連れてきたかという肝心な部分が分かっていないことだ。船乗りが食料として残した、難破船から泳ぎ着いた、近くの島から農家が移したなど、いくつもの話が語られる。バハマの観光当局自身も、由来は不明としている。
泳ぐ理由はもっと身近なところにある。ブタは泳げる動物で、ここでは船が食べ物を運んでくることを覚えたとみられる。観光客から見れば愛らしい出迎えでも、ブタにとっては餌を探す行動の一つなのである。
人気が高まるにつれ、別の問題も生じた。観光客が浜で餌を与えると、ブタが砂や塩水を多く飲み込み、体調を崩すおそれがある。現地では餌の与え方を示す案内を設置し、適切な餌を与えるための設備や、子ブタ・病気の個体を管理する場所も設けられている。
この浜を有名にしたのは、ブタが泳げるという事実だけではない。無人島に連れてこられた家畜が、人間の観光行動に合わせて暮らすようになったことまで含めて、ピッグ・ビーチの風景はできあがっている。
